「まだ」「もう」20年

20年の節目を迎えた平成女鉾ではあるが、ある意味21世紀を迎える前後からその存続は危機を迎えていたと言える。

第7代目会長 日詰千栄さん
第7代目会長
日詰千栄さん
「京都若衆会」「平安建都1200年記念事業」がひとブーム終わり、失われた10年、20年の入り口だと認識し始められ、主要な鉾町の旦那さんと言える企業がその本業からも退場する事態となったから。
さらに来京観光者数を6000万をという掛け声はいつしか小さくなり、その時期4000万人前後を低迷する。現在の8000万人台への上昇は想像できなかった。

ところが、旦那衆なしで女囃子方は自分たちでその運営の重荷を引き受け、いつの日か山鉾巡行に携わりたいという夢を追うことにした。

現在60名の囃子方のうち1996年の第1期生は3名、新ミレニアムころの経緯を知る現会長日詰さんが3期生。外のひととの温度差を肌に感じる広報担当の松嶋さんは9期生、竹村さんは18期生。お囃子練習で見かけた鉦なしで鉦すりを振る女性は、昨年暮から参加の20期生。
連綿と女囃子方は、流儀の伝達と成長を絶やさない表れでもある。

しかしながら、遠目に眺めていた京都人的感覚でいえば、ぼちぼち、
そこにいてはったんや
とニンマリしつつ声に出すタイミングかなと思う。

平成《男》鉾やってもあかん

初めの数年、

『巡行に参加したいゆうても「平成《男》鉾」やってもあかんのやで』
『氏子町でもなく、鉾の定位置(山鉾町)もない鉾』

2001年にJR京都駅前で鉾建てし、囃子演奏した時には

『玄関口でエセ囃子をお客さんに聞かすとは何事』

などと揶揄もされたという。

弊社五所光一郎が平成女鉾ができた頃の話を熱く語る
弊社五所光一郎が平成女鉾ができた頃の話を熱く語る
今は胸を張り「祇園囃子奏でます」と言い切っているし、そのことに異論は出ない。こんなことででも進歩で、積み重ねの一つでもある。

そして、八坂神社、神泉苑で奉納祇園囃子を定例的に行えるようにもなり、時には、文化イベントにお呼びがかかったりし、実績を積みつつある。

できて20年では千数百年の御霊会はおろか、室町以来七百年の山鉾創建復興史の足元に遠く及ばない。それこそ、血や命を賭して祇園祭復興を成し遂げた物語を映画「祇園祭」なんかで見るにつけ覚悟のほどを問われるのは仕方がない。

どんなに伝統と格式の敷居に阻まれようとも、我慢強く、地道に続ける平成女鉾清音会の歩みをきくと女性の逆風をかわすしなやかさ、しぶとさは評価の域にたどり着いているのではと感じる。

さらに楽観的に

50年100年たち、次の世代になった頃、巡行の列に加わってるかも
或る日突然、状況や、事情が許し、お声がかかるかも

と会長がさらっと言うのが理詰めで計算高い男にはうらやましい。

白木のままの女鉾を案じて懸装品の寄贈も突然降って湧いてくるとひっそり期待している、というから100年計画の余裕が持てるのだろうか。

いつでも、だれでも参加できる。

18期生竹村佳子さん
18期生竹村佳子さん
お祭りごと、祭礼儀式の伝統的な決まり、格式に対してこだわるべきこと、柔軟に対応していいことの線引き、色分けは難しいことばかりである。そもそも「女人禁制」を覆し、「女鉾」と名乗るゆえにちゃぶ台をひっくり返しているようにも見えるがそうではないはず。

誕生からの存在理由を「伝統と革新」に置いているので拝礼を起点とした神々への尊崇、演奏の作法は当然ながら、イベント鉾と切って捨てられるのは良しとせず、「神さまに対して演奏する」巫女のようなこだわりは捨てはしない。
やはり苦悩、ジレンマの時期もあって、随分と皆で議論したという。

そんなことを経て、チャラチャラしたエンターテイメントといわれても、浴衣の新調、鉾の懸装品の資金を自ら手当するためなら出張囃子も厭わない覚悟もある。
これも行政などからの補助支援なく、多くは望めないグッズ販売ゆえの生きる道だろうか。

氏子鉾町でないからこそ、メンバーの年齢も出身の縛りなく受け入れられる。いつでも、だれでも仲間に加われる。
京都に来て2年目のOLがお囃子に参加できてしまうのもそんなしきたり、地縁にこだわらず根っからの京都ファンを生み出す素地になるかもしれない。

鉾も京都駅でも岡崎でも建てられる。許されれば洛中の大通りででも。
とはいうものの鉾建て費用は数百万円にもなるので10年に一度、鉾建てをするのがやっとの思いなのが実情だとか。
(前回は創立10周年に新風館で。今年20周年に岡崎ロームシアターで。)

練習前拝礼

ちなみに、長刀鉾保存会の事業費用額は3000万円内外(2012,13年)と公表されている。
役行者山保存会の場合、年間経常費用が約630万円、ちまき販売など事業収入は140万円ほどだそうだ。「山の修繕費も必要。巡行補助金がなければとてもやっていけない」と関係者は語る。(http://www.kyoto-np.co.jp/kp/koto/gion/rensai/rensai_140703.html)
神宿る山鉾、公益法人である山鉾保存会と比べてはならないとはいえ、各保存会には、府市、市観光協会などから祇園祭協賛会を通じ巡行補助金や、山鉾連合会から100万円〜500万円の支給があるという。

メモリアルイヤーの夏から秋

創設20年で成人となったわけでもなく、今年の主舞台は、7月31日の八坂神社での奉納囃子、9月30日から3日間の鉾建てとなる。
次の世紀にならないと伝統の決まりごとは大きく変わらないかもしれない。

9期生松嶋美紀代さん
9期生松嶋美紀代さん

平成女鉾清音会のお囃子練習や、勉強会、奉納演奏が続く限り、常にわずかづつでも、取り巻く事情は彼女らが歓迎する向きに変化革新していることは確かだ。

平成女鉾清音会 web http://onnaboko.com/
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